THE PRODUCT
Vol. 01
August 26, 2026
服は、デザインが決まった時点で完成するものではありません。生地を広げ、裁断し、いくつものパーツに分ける。それぞれを縫い合わせて形をつくり、洗いや加工を施す。仕上がりを確認し、一着の製品として送り出すまでには、多くの工程と、それぞれに異なる技術が必要です。
UpcycleLinoは、nest RobeとCONFECTの生産過程で生まれる裁断くずを、生地として循環させる取り組みから始まりました。しかし、循環する素材が生まれただけでは、服は完成しません。その生地をどのように裁断し、どのように縫い上げるのか。洗いや加工によって、素材の表情をどのように引き出すのか。さらに、生産に使用した水や資材をどのように扱うのか。
UpcycleLinoとSKEWedのコラボレーションでは、素材から製品になるまでの工程を、EDWINの国内生産拠点とともに進めました。循環する素材が一着の服になるまでの工程と、その現場で積み重ねられている技術を辿ります。
01
循環する素材に、新たな視点を加える
UpcycleLinoが向き合ってきたのは、服をつくる過程で生まれる裁断くずです。製品の形に合わせて生地を切り出す際、その周囲にはどうしても使用されない部分が残ります。UpcycleLinoでは、その裁断くずを回収して細かくほぐし、再び糸へと紡績することで、新しい生地の原料として使用しています。一度役割を終えたものを、単に元の状態へ戻すのではなく、再びものづくりの中へ組み込む。反毛糸に現れる自然なムラやネップも、その過程で生まれる素材の表情として生かしています。
SKEWedは、EDWINが長年培ってきたデニムの生産技術を背景に、従来のものづくりへ異なる視点を加えるファクトリープロジェクトです。名称の「SKEWed」は、「斜め」や「歪み」を意味します。これまで蓄積してきた技術や生産背景を礎にしながら、素材やデザイン、異なる考え方を組み合わせることで、新しい製品のあり方を探っています。
裁断くずを次の素材へつなげるUpcycleLinoと、積み重ねてきた技術に新しい角度を加えるSKEWed。両者に共通しているのは、これまで存在してきたものを捨てたり、否定したりするのではなく、そこに別の可能性を見つけ、次のモノづくりへ繋げていく姿勢です。
02
縫製から加工まで、東北の生産拠点で
今回のコラボレーションでは、ジャケット3型を秋田県のEDWIN BASE、パンツ3型を青森県の縫製工場で生産しています。縫製を終えた製品は秋田県のJEANS M.C.Dへ運ばれ、それぞれの仕様に応じた洗いと加工、仕上げを経て完成します。
EDWIN BASEでは、原反の保管から縫製、検品までを一貫して行います。JEANS M.C.Dでは、縫製された製品を受け入れ、洗い、染色、脱色、擦り、乾燥、仕上げ、検品までを行います。
一着が完成するまでの工程は、一つの工場だけで完結するものではありません。生地や製品は複数の生産拠点を移動し、それぞれの場所で必要な技術を加えながら、最終的な形へと近づいていきます。
生地が製品へ変わる動線
EDWIN BASEの工場内に入ると、手前に原反の保管場所があり、その先に延反と裁断の設備、さらに奥へ進むと縫製ラインが広がっています。生地は最初に、必要な長さと枚数に合わせて延反台へ広げられます。重量のある原反を人の力だけで動かすことは、作業者に大きな負担がかかります。そのため延反台には、天板から空気を送り出し、生地をわずかに浮かせながら移動させる仕組みが取り入れられています。
広げられた生地は、CAM裁断機によってパーツごとに切り出されます。裁断機は、あらかじめ入力されたデータに沿って生地を正確に裁断します。裁断の精度は、後の縫製のしやすさだけでなく、製品の寸法やシルエットにも関わるものです。切り出されたパーツは工程ごとに分けられ、縫製ラインへ送られます。工場の入口から奥に向かって、生地がパーツになり、パーツが組み合わされ、次第に服の形へ変わっていく。製造の流れが、工場内の動線として可視化されています。
工程の一つひとつが、次の工程の精度を支えている。
機械の精度と、人の判断
工場内には、用途の異なる多くの専用機が並んでいます。ポケットの縫製や取り付けには、ポケットセッターと呼ばれる機械を使用します。製品ごとに用意されたテンプレートにパーツを固定し、設定された形状と位置に沿って縫製することで、複雑な工程を安定した精度で行います。
ベルトループは、細長く縫製されたパーツを専用機へセットすると、設定された長さに裁断し、縫製から取り付けまでを自動で行います。タックボタンやリベットの取り付けにも、専用の半自動機や全自動機が使われています。こうした設備は、人の技術を単純に置き換えるためのものではありません。
繰り返し行う作業を機械が一定の精度で担うことで、製品ごとの差を抑え、作業者の負担を軽減する。その一方で、人は生地の状態や縫製箇所の厚み、仕上がりを確認しながら、判断を必要とする工程を担います。
その一つが、巻き縫いです。巻き縫いは、2枚の生地の縫い代を互いに巻き込みながら、2本のステッチで同時に縫い上げる技法です。縫い代が内側に収まり、強度の高い仕上がりになるため、ジーンズをはじめとするワークウェアの縫製に欠かせません。専用のミシンと、「ラッパ」と呼ばれるアタッチメントを使用しますが、生地を送り込む位置や角度、速度によって、縫い目の状態は変化します。設備があれば、誰が担当しても同じ仕上がりになるわけではありません。
EDWIN BASEでは、この工程を経験のある職人が担当しています。生地の厚みや重なりを確認しながら、一定の幅と速度で縫い進めていきます。工場内には、ミシンや縫製用パーツの修理、調整、メンテナンスを行う専用の部屋も設けられています。
製品を縫う技術だけでなく、それをつくるための道具を維持し、必要に応じて調整する技術も、工場の中に蓄積されています。自動化された工程と、熟練を必要とする工程。設備の精度と、人の判断。どちらか一方を選ぶのではなく、それぞれを適切な場所で組み合わせることで、製品の品質と生産性が保たれています。
自動化と熟練は、対立ではなく分担
03
縫製された服に、表情を与える
縫製と検品を終えた製品は、洗い・加工工場のJEANS M.C.Dへ運ばれます。服は、縫い上がった時点で形としては完成していますが、生地の色や硬さ、縫い目に現れるアタリ、肌に触れたときの風合いは、その後の洗いや加工によって大きく変化します。
工場へ届いた製品は、加工内容に応じて仕分けられ、染色、洗い、脱色、レーザー、擦りなどの工程へ進みます。レーザー加工では入力したデータに沿ってヒゲやアタリ、ダメージを表現し、一方で、専用のパッドを使い人の手で生地を擦る加工もあります。求める仕上がりに応じて、データによる再現と、縫い目や生地の重なりを確かめながらの手作業を使い分けています。
洗い加工にも、軽石で着用を重ねたようなアタリを生むストーンウォッシュや、ゴムボールで生地を柔らかく仕上げるボールウォッシュなどがあります。どのような表情を求めるかによって設備や資材、加工時間は異なり、均一に再現する部分と製品の状態を見ながら調整する部分を使い分けることで、最終的な風合いが仕上げられていきます。
04
加工工程の中で、使用するものを減らす
洗い加工には、水や熱、薬品、軽石など多くの資源が必要です。そのためJEANS M.C.Dでは、データに沿って生地の表面を変化させ水や薬品、軽石の使用を抑えるレーザー加工や、オゾンガスの漂白作用でデニムを脱色し水や薬品の使用を抑えるオゾン・フィニッシュなど、資源の使用量を抑える設備と加工方法を取り入れています。
環境負荷の低減は、完成した製品とは別に行われる付加的な取り組みではありません。ものづくりの方法そのものを見直すことで、使用する資源や作業者への負担を減らしていく。その姿勢が、生産ラインの中に組み込まれています。
環境負荷を減らすことも、加工工程の一部として考える。
05
使用した水と資材の、その先まで
加工を終えた後にも、工場の工程は続いています。ストーンウォッシュなどで使用され、排水槽に沈殿した砂は、取り出して乾燥させ、セメントの材料として再利用されます。加工によって温度が上がった排水は、その熱を無駄にしないようボイラーへ循環させます。それ以外の排水も、温度やpHを調整し、泥質物を取り除いた後、ろ過します。処理された水は、再び工場内で利用するか、基準を満たした状態で放水されます。
循環する素材を使用することだけで、ものづくり全体が循環するわけではありません。生産に使った水をどこへ戻すのか。加工後に残った砂や汚泥をどのように扱うのか。製品にならなかったものや、工程の中で生じたものを、その後どこへつなげるのか。完成した服からは見えない場所にも、ものづくりの工程があります。
06
最後に行われるのは、確認すること
洗いと加工を終えた製品は、乾燥、スチーム、糸切りなどの仕上げ工程へ進みます。洗い加工を施すと、生地の種類や織り方、縫製仕様によって、製品の寸法は変化します。そのため、加工前と加工後の寸法をサイズごとに確認し、定められた仕様から大きく外れていないかを検証します。縫製部分に問題がないか。ボタンやリベットが正しく取り付けられているか。加工による過度なダメージがないか。製品の中に、針や金属片が残っていないか。一つずつ状態を確認し、検針を行った後、製品は出荷されます。
裁断、縫製、洗い、加工には、製品に目に見える変化を加える工程があります。一方、検品は、新しい形や表情を加える工程ではありません。しかし、それまでに行われたすべての仕事が、正しく一着の製品に反映されているかを確かめるためには欠かせないものです。一着をつくることと、一着を製品として送り出すこと。その間には、最後まで確認を続けるための基準と責任があります。
素材だけでは、服にならない
UpcycleLinoの生地は、衣服の生産過程で生まれた裁断くずを、原料の一部として使用しています。しかし、循環する素材であるという事実だけで、一着の服としての価値が完結するわけではありません。
生地の特性を理解し、正確に裁断すること。厚みや重なりを確認しながら縫製すること。製品の目的に合わせて、洗いや加工を選ぶこと。使用する水や資材を抑え、加工後に残るものを適切に処理すること。そして、完成した製品を一着ずつ確認すること。
素材が製品になるまでには、複数の工場、設備、技術、そして人の判断が関わっています。一つの特別な技法だけではありません。それぞれの工程を正確につなぐための設備。繰り返しの中で培われてきた技術。素材や製品の状態に応じて行われる判断。そして、より適切な方法へと工程を更新し続ける姿勢。
循環する素材と、それを一着の服として成立させるための技術。UpcycleLinoとSKEWedのコラボレーションは、その両方が重なることで形になりました。
THE PRODUCT
Vol. 02
September 9, 2026
SPECIAL THANKS
EDWIN BASE / JEANS M.C.D